漫画は、今や日本を代表する文化といっても過言ではありません。２０１９年には、ロンドンの大英博物館で「マンガ展」も開催されました。

　「のらくろ」は、現代漫画の大ヒット作です。連載が始まったのは、満州事変が起きた１９３１（昭和６）年。野良犬でやせっぽちの「のらくろ」が、軍隊で失敗を繰り返しながらも次第に成長し、昇進をつづけていくストーリーです。軍国主義や立身出世といった戦前の風潮もありますが、内容は子ども向けでユーモアあふれた作品です。それだけに人気を呼び、戦前としては異例の長期連載になりました。しかし、太平洋戦争が始まる１９４１（昭和１６）年、当時の内務省から「戦時中に漫画を連載するのは不謹慎」と指摘され、連載が打ち切られます。

　作者の田河水泡は、鉄腕アトムの手塚治虫やサザエさんの長谷川町子にも影響を与えました。

　戦後になると、月刊誌に続編が連載されたり、テレビアニメが放送されたり、関連商品が発売されるなど根強い人気を示しました。

　この復刻版全１０巻は、二等兵として軍隊に入営してから大尉で除隊し大陸で活躍するという、戦前の物語と同じ内容で、１９６９（昭和４４）年に発行されたものです。